
犬がやたらと「わんわん」と吠えてしまうのは飼い主さんも困ってしまうもの。ここでは状況に合わせたトレーニング方法・対策をご紹介します。
犬がすぐ吠えるのをやめさせるには?
特に理由がないのにやたら吠える場合
吠えの問題は理由を確認する
ほえる・鳴くという行為は犬にとっては必要なコミュニケーションの手段。「犬に無駄吠えなし」という言葉があるように、吠えたり鳴いたりする行為には必ず何か理由があります。
「何とかして思いを伝えたい……」と必死になっていると考えてほぼ間違いありません。その理由を察知して対処することが大事です。 例えば、「満足いくまで散歩させてなかった」「十分に接触していなかった」などということはないでしょうか。飼い主と十分な接触がないと、犬は寂しくてたまらなくなり、意味もなく吠えてしまうことが増えてしまいます。
寂しくて吠えている場合はハグしてあげよう
ムツゴロウこと畑正憲さんは、犬が鳴くとぎゅっと抱きしめてあげるそうです。お互いの心臓の音が混じり合うくらいにしっかりとだいて一緒にいてあげる。あなたの愛犬もハグがほしくて鳴いている可能性もあります。そう感じたら犬をしっかりハグして安心させてあげるのも良い方法です。
怖がって吠えている場合は対象に慣らす
犬が怖くて吠えている場合、怖くないと思えるように慣らすことが重要です。しかし、どこまで緩和できるかは犬の気質次第。慣れにくい犬は散歩で対象を避けるなど、暮らし方を考える必要もあるでしょう。根底に恐怖があるならば社会化が必要です。どうしても慣れない場合は、散歩の時間を変えるなどの対処が必要になってくるでしょう。
気配や物音に吠える
吠えたら「わかったよ」と軽く褒めて撫でてあげる
犬の性格として「忠義心が強い」ということがあげられます。飼い主を守りたいためにあやしい気配に吠えてしまう。しかしいくら飼い主を守るためといっても、知らない人を見るたびに、たたましく吠えるのはちょっと困ってしまいます。
気配や物音に吠える最大の理由は、なわばりを荒らされているという危機感です。これは犬の本能なので、やめさせることはできません。
なので一声吠えたら、「OK、わかったよ。あとは私が対応するからね」と軽く褒め、頭や背中をなでてやりましょう。ボディタッチは飼い主の感謝の気持ちを伝える最上の方法です。飼い主から感謝されれば、犬は任務を達成したと理解し、それ以上吠え続けることはなくなるはずです。
インターフォン・玄関チャイムに吠える・気配や物音に吠える

インターフォンに吠える犬の心理って?
玄関のチャイムが鳴ると玄関にかけていき、「ワンワン」と吠える場合があります。これは訪問者に対して、「群れ以外の誰かが侵入してきたから排除しなくては」という警戒本能が発揮されているためです。
最初のうちは「誰かが来たぞ」と反応して番犬意識から吠えていたのが、そのうちにチャイムの音に条件反射で反応するようになってしまったと言えます。
玄関チャイムに吠えなくするトレーニング
インターフォンがなったら知育おもちゃを与えて
インターフォンに反応して吠える犬は多いです。吠えが一時的で迷惑にならないようならばさほど問題ではないでしょう。気になる場合は、インターフォンと犬にとってのよいことを結びつけてください。
インターフォンが鳴ったら、ごほうびを入れた知育おもちゃで特定の場所への誘導を繰り返していきましょう。インターフォン=知育おもちゃが出てくる、と学習してそのうち自主的に特定の場所へ移動するようになります。
集合住宅などで廊下の気配や物音に反応して吠える場合も、同様の対処が有効です。
インターフォンがなって犬が反応しました。

知育おもちゃで特定の場所(ベッドやサークルなど)に犬を誘導します。

犬が知育おもちゃに夢中になっている間にインターフォンに対応しましょう。物音や気配の場合は、それが遠ざかるまで知育おもちゃで遊ばせます。

インターフォンの音に慣らしてみよう
上記以外にも家族で協力してできる訓練法があります。家族の誰かが外からチャイムを鳴らしてみます。家の中にいる人は犬が吠えようが鳴こうが知らん顔を通し、無視することを繰り返してみましょう。そのうちに犬も虚しくなり、吠えることをやめるでしょう。
「こら!」「静かにしなさい!」は構われていると勘違いしてしまうことも。またお尻をぶつような体罰は犬の反抗心を強くしてしまい逆効果です。上記の方法を試してみてください。
散歩中に他の人や犬に吠える・飛びかかる

他の犬に吠えてしまう心理って?
他の犬に向かって吠える理由、ひとつは社会性の欠如です。生まれてすぐに親や仲間と引き離され、飼い主の部屋の中でずっと過ごしてしまった、という犬です。仕事などで忙しい人が犬を飼うと、外に連れ出す時間がなく、散歩も遅い夜になりがち。しかし犬にも社会性は必要です。忙しくても休日を利用するなどして、犬の社会化のしつけをするようにしましょう。
社会化の適齢期は生後1~3ヶ月頃。すでに大きくなっていたとしても、近所の人、子ども、赤ちゃんなど、たくさんの人に会わせてみましょう。公園や住宅街だけでなく、商店街などにも連れていってみましょう。車や電車を見せたり、車にも乗せてみます。飼い犬は人の社会のなかで生きていく動物です。人の社会を見せ、慣らしていかなければ、他の犬や社会に適応できず、激しく吠えてしまうのも無理のない行動なのです。
相手に反応する前にごほうびで興味をそらす
とはいえ、社会化できていたとしても興奮して、他の人や犬に吠えり掛かったりする場合があります。そんなときは相手に興味が行く前にご褒美を愛犬の鼻先に出して気を引きましょう。飼い主さんが愛犬の視線をコントロールすることが大切です。
散歩中は、いつものごほうびよりもランクの高いものを用意するなどして、愛犬の興味が「ごほうび > 他の犬・人」となるようにすること。また、飼い主さんが早めに吠えそうな対象を見つけ、回避しましょう。すれ違ったらごほうびを与えます。
愛犬が吠えそうな相手を見つけたら、鼻先にごほうびを出します。

対象に視線を向けないように、犬を誘導しながらすれ違いましょう。


トラウマで吠えている場合
他の犬を見ると激しく吠えてしまう原因のひとつに「トラウマ」があります。子犬のころに乱暴な犬に攻撃されて怖い目にあったり、噛みつかれた経験がある場合です。他の犬を見た時に、その経験がフラッシュバックして吠えてしまうのです。
他の犬を見て吠える原因が社会化の不足か、トラウマかを見分けるには、吠え方を注意深く観察すると、たいだい判断がつくものです。トラウマで吠える場合は、毛を逆立てたり、身を震わせるなど、本当に怖がっている様子が見て取れます。
この場合、知らない犬が近づいてきたら、愛犬に「おすわり」と声をかけて座らせます。座っている犬に攻撃したり、吠えかかる犬はまずいません。知らない犬が近づいてきてもお互いに吠えることなく無事にやりすごすはずです。
おすわりをして、他の犬に吠えることもなかったら、飼い主も座って、愛犬の頭や背中をなでてほめてやりましょう。何回かこういう経験をすると、「大人しくしていれば褒めてもらえる」と覚え、むやみに他の犬に吠えかかるクセはなくなります。
吠えても無視することも躾けのひとつ
吠えた時に叱るのはNG
吠えたり、鳴いたときの飼い主のリアクションも大事です。「うるさい!」などと大声を出していませんか? 犬は人間の言葉の意味を理解できません。大きな声を出すと「もっとほえろ」と勘違いしてしまうことも。
反対に「いいこね」「大人しくしてね」と優しい言葉をかけるのも考えもの。こうすると鳴けば優しくしてもらえると思い込んで、しょっちゅう鳴いたり吠えたりするこまった犬になってしまいます。
というわけで、犬のすることに反応しないこともトレーニングになります。叱ることもたしなめることもしないで、ただ無視を続けてみましょう。犬は無視されるのが一番つらく、叱られるよりこたえます。
参考文献
『もっと楽しい柴犬ライフ』(出版社:誠文堂新光社 編:愛犬の友編集部)
『本当に知りたいイヌのココロ』(出版社:PLUS 監修者:藤井聡)
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