
しぐさでわかる犬の本当の心理・感情 その1
ここでは、犬の行動やしぐさでわかる犬の心理をケースごとに紹介していきます。長くなるので読み物として御覧ください。
夜鳴き遠吠えはなんのサイン?
夜に鳴く犬の遠吠え。遠吠えは昔、犬がまだ野生の動物だったころに先祖から受け継いだ習性です。この行動をする心理はなんなのでしょうか?
この行動の心理はまず、犬を飼う場所が関連しているとされます。少し前まで犬は玄関脇の犬小屋で飼うのが普通でした。しかし最近はこの飼い方はできるだけ避けたいものだとされています。
玄関脇は通りに近く、知らない人がしょっちゅう通るために犬にとっては落ち着かず、不安がつのることに。さらに玄関を閉めると家族とシャットアウトされてしまいます。犬は寂しくなってしまい、それで「ウォーン!」と必死で訴え遠吠えを繰り返すというわけです。
できれば家族の顔が見えて、雰囲気が伝わる室内で一緒に暮らすようにしてください。どうしても戸外でというなら、リビングが見える庭先で飼いましょう。これで夜鳴きは止むはずです。
すぐ飼い主に飛びつくのはなぜ?
飼い主の姿を見ると、どこからでも走り寄ってきて飛びついてくる……。飼い主は、こんなにも慕ってくれるのかと思います。しかしこれは間違いのもと。
飼い主に飛びついてくる行動は、飼い主を自分より下位に見ているから。できれば押し倒して、制御しようとしているのです。犬は祖先であるオオカミの時代から、群れを作って生きてきた動物です。群れを作る動物は、リーダーに従っていきているほうが安心していられます。
飼い主に飛びつく行動をやめさせたいなら、飼い主のほうがリーダーだということをしっかり教え込むことが大事です。飼い始めた時に、飼い主がリーダーなのだと教え込んでしまえば、犬は信頼できるリーダーを得たと安心して穏やかに暮らしていけます。
飛びつくクセを直すには、落ち着いて無視することです。飛びつかれても何事もなかったように知らん顔をして、さっさと立ち去るようにします。群れで暮らす犬にとって、無視されることは何よりも辛いもの。怒ったりきつく叱るのはいたずらに犬をあおってしまうだけで効果的とは言えません。無視し続けているうちに、利口な犬は飼い主の方がリーダーなのだと察し、飛びつくことはなくなっていくでしょう。
吠え声のトーンでわかる犬の言葉
「犬の声は、人の声以上に心を伝える」―― 犬の翻訳機「バウリンガル」の開発に携わった専門家はこう話しています。
人間は言葉が伝えるので、声よりも言葉で心を伝えることができます。しかし、犬は声だけで思いの全てを伝えようとしています。そこでバウリンガルの開発にあたり、開発者はたくさんの犬が吠えている映像を集め、それを周波数やシチュエーションなどさまざまな角度から分析したそうです。
- 「わんわん」という鳴き声。その犬本来の声で明るい感じならば「楽しいよ」「るんるんだよ」と元気いっぱいで張り切っていることを伝えています。
- 「キャンキャン」と甲高い鳴き声。これは自分に注目を集めるための声で、「こっちを見て!」「もっとかまって」「遊ぼうよ!」という気持ち。
- 「ガウガウ」と唸るような声は、フタストレーションをぶつけている声。「なんだかイライラするよ」「なんか感じわるーい!」と訴えているのです。
- 「キューン」「キャウー」というような声は要求を表します。「お願いがあるの」と言いたいときの声です。
- 「クーンクーン」は「さびしいよ~」「甘えたいな~」というときの声。
- 「ガルルル、グルルル」という声は犬種に関わらず、だいたい威嚇のサインです。
もちろん、声だけで全てがわかるわけではありません。体全体を使った表現やその時時の状況も合わせて、犬が何を言いたいのか、聞き分けることが大事です。
しっぽを振るのは喜びだけではない
犬がしっぽを振っていれば喜んでいると思っていませんか。犬にとってしっぽは大事なコミュニケーションツール。喜びだけではなく、いろいろな感情を表現しています。
喜んでいるとき
まず注目するのはしっぽの向き。喜んでいるときは、しっぽを下向きにして、付け根からピコピコとリズミカルに振ります。顔を見ると、口角が上がり目も細めて、笑っているように見えることもあります。こんなときには、飼い主も喜びの気持ちをこめて頭をなでてやりましょう。犬と喜びを共感でき、お互いの気持が通い合うはずです。
警戒しているとき
反対にしっぽを下に向け、先だけ小刻みに振っているときは軽快信号。何かにおぼえて「注意しろ!」とサインを送っていることが多いのです。たとえ、しっぽが斜め下を向いていても、振っているのが先端だけだったら、警戒モードの証拠。飼い主でも不用意に近づくと危険です。しばらく様子をみるか、できるだけ無視して興奮がおさまるのを待ちましょう。
威嚇しているとき
しっぽをピンと立てているのは威嚇しているときです。しっぽを振るスピードと警戒心はほぼ比例していきます。小刻みにぷるぷると速いテンポで振っているときは、警戒心が強まっています。
犬がしっぽをピンと立ててせわしなく振って近づいてくると、好意を示しているのだと思って、手を出してなでようとしてしまうことも。しかし、実は正反対。犬は最大の警戒心を抱きながら、威嚇のために近寄ってきてる場合もあります。
もちろん、犬にも個体差があるので一概には言えませんが、初対面の犬には正面きって向かい合わないようにするほうが懸命です。
しっぽでわかる降参のサイン
戦いに負けて逃げるとき、よく「しっぽを巻いて逃げる」と言います。これは犬の行動から生まれた言葉。犬が尻尾を巻くときは、まさに降参の宣言。しっぽを巻いて背中を丸めて身をかがめ「参りました。これ以上は攻撃しないで」と全身で訴えているのです。
こうした状態のときに犬の正面に立ちはだかると、犬は威圧感を覚えて突然かみついてくることもあります。犬にしてみれば必死の覚悟で捨て身の攻撃に出たようなもの。気を付けてください。
降参ポーズをしている犬への対処法
「降参!」のしぐさをしているときには、まず犬に対して横向きの姿勢になって、犬の目線の高さまでかがみ、しばらく犬を見ないようにします。やがて犬は落ち着きを取り戻してくるはずです。そうしたら犬の横に身を低くして寄りそい、そっと背中をなでて安心させるといいでしょう。
犬にとっては上から見下されることも大きな声が降ってくることも恐ろしいことです。子犬が降参の姿勢をとっているのにそれに気づかず、大きな声で叱るとさらに恐怖心をあおるけっかになり臆病で卑屈な性格になってしまいます。
犬の耳を見れば感情がわかる
犬の聴覚は人間の4倍以上も発達しており、人間には聞こえない2万ヘルツ以上の超音波を聞くことができると言われています。犬はさらに耳を動かす筋肉、耳介筋がよく発達していて、思い通りに耳を動かすことができます。つまり犬の耳に注目すると、かなりの感情を読み取ることができます。
耳をピンと立て、表情は穏やかで口元が閉まっているときは何か気になることに気づいたとき。「あれ、なんだろう?」と思っている仕草で、訪問客の気配に気づいたときなどによく見せる表情です。
耳を立てたまま動かさず、目が光り、口元が小さく開いているときは、興味のある対象を見つけたとき。「おもしろそうだなぁ」とワクワクしている状態です。視線の先を見ると、草むらからカエルが出てきたなどということも。
耳を少し前に倒し、歯を見せてウーウーと唸り声をあげるのは、せいいっぱい威嚇しています。こんなときは、視線を合わせないようにして、犬が落ち着くのを待つほうが懸命です。
垂れ耳の犬種の場合は、人目で耳の動きを見分けるのは難しいもの。でもよく見ると、いつもより耳に力が入っていたり、耳がピクッと動いたりしていることに気づくはずです。普段からよく観察していれば、しだいに垂れ耳の犬種でも耳と感情の動きの関連性を読み取れるようになります。
犬の後ろに倒れた耳は服従か恐怖心
犬の聴覚がさらにすぐれているのは、音のする方向に関しても360度感知できることです。わずかな音でも、どの方向から聞こえてきたのか、すばやく判断できるのです。
犬が耳を倒していることがありますが、これは特別なシチュエーションです。それも、特別にいいときと特別に悪いときの療法の可能性があります。飼い主は犬のしぐさを読み取って、なぜ耳を倒しているのか、理解することが大事です。
穏やかな表情を浮かべて、歯も見せず、鼻にシワも寄っていない。こうした状態で耳を後ろに倒している場合は、「なんの警戒もしていませんよ」のサイン。目の前にいる人を信頼して「あなたに服従します」という気持ちを示しています。
さらにしっぽをゆるやかに振っていたら、「よかったら散歩でもしませんか?」と誘いかけているのです。時間があれば誘いにのってあげると飼い主との信頼感はいっそう深まります。
耳は後ろに倒れていても、歯を見せ、鼻にシワを寄せているときは、何かを極端におそれているサイン。よく見ると耳が倒れているだけでなく、耳介筋が緊張し、左右に張り出しています。こういうときは犬に無理強いはしないこと。少し様子を見守っていると、だんだん耳介筋の緊張がほぐれてくるのがかわります。犬の恐怖心がやわらいできた証拠です。この状態になれば、犬に次のアクションを求めても、素直に従うはずです。
耳の後ろをかくのは情緒不安定の証拠
犬が片足をあげて耳の後ろをかいている。これはもちろん、ノミがいたり皮膚病の心配もないことはないのですが、ちゃんと手入れをしているならば、耳をかく原因はたいてい情緒不安定やストレスです。
犬は情緒不安定だったり、ストレスが強いときには「転位行動」といってまったく別の行動をとって気をまぎらわせようとします。人間もイライラすると手の指をボキボキならしたり、足を小刻みにゆすったりします。それと同じです。
かゆみの原因がないのに、しょっちゅう耳をかく犬は何かストレスを抱えているのかもしれません。犬の最大のストレスは愛情不足です。耳をかくクセに気づいたら日に何度か背中を撫でてやるなどして「ちゃんと気にかけているよ」というサインを送るようにしましょう。
散歩の途中で立ち止まり、耳を前後左右にピコピコ動かすのは思案中のサインです。どっちに行こうか迷っているときなどに見せる耳のアクションです。なんらかの気配を感じ取り、正体を探ろうとしている場合もあります。
こうした状態のときに無理にリードを引っ張るのは好奇心に水をかけるようなもの。どうしたいのか、犬の考えがまとまるまでしばらく待ってやるようにしましょう。
よく体をなめるのはストレスの表れかも
体をなめてきれいにするグルーミングは犬や猫によくみられる行動ですが、犬は猫ほどグルーミング好きではありません。それに犬は集団の中でリーダーを筆頭に序列を作って生きてきた動物です。群れの中では上位の犬を下位の犬が毛づくろいします。
それなのに、自分で毛をなめているとしたら、深い理由があるに決まっています。考えられる理由は、小さな傷を負っているか、あるいはストレスがあるときです。よくみると同じ部分ばかりなめていませんか。
これは常同行動の一部に分類されるグルーミング行動といい、典型的なストレス行動の特徴です。
犬の舌はザラザラしているため、同じ場所をなめ続けていると、しだいに毛が抜け落ちて皮膚が露出してしまいます。さらになめ続けると皮膚が破れたり、露出した皮膚をかむ自傷行為へと発展することも珍しくありません。
ここまでのストレス行動に追い込むのは、飼い主との接触が以前に比べて減ったケースが多いようです。飼い主夫妻に赤ちゃんが生まれたり、新しい子犬を飼い始めたなど、思い当たることがありませんか。
そんなときは、1日に何度か犬を撫でたり、ぎゅっと抱いてやり「お前もかわいいよ」という飼い主の愛情をダイレクトに伝えるようにしましょう。こうしたタッチング行為が犬を満足させ、やがて舐める行動は消えるはずです。
飼い主の顔をなめるのは従順さのアピール
飼い主の顔をペロペロ舐める。この場合、飼い主をお母さんと見直して甘えています。
オオカミの子は、お腹がすくと、母親の口のまわりをなめる習性があります。母親は子どもになめられると食べたものを吐き出します。ほどよく消化された食物は子どもでも消化しやすく、最高の離乳食に鳴るというわけです。野生の子育ては知恵にあふれています。
犬にもこの習性の名残があり、母親と認めた相手に対しては顔、とくに口の周りをペロペロとなめる習性があります。こんなとき、可愛いからといって撫で回すと、いつまでも顔をなめるくせがついてしまいます。だからといって、気持ち悪がってなめようとする犬を邪険に追い払ったり叱ったりするのはあまりにかわいそうです。
ベストな対処法は「待て!」となめようとする行為をやめさせ、しばらく犬を無視すること。顔をなめても特別なリアクションをしないことがわかれば、自然にぺろぺろと顔をなめる行為はなくなります。
飼い主に飛びついてくる本当の意味
散歩をしようとサークルをあけたとたん、飛びついてくる。飼い主としては愛されている証拠と思いたいところですが、実際は、あなたを自分よりちょっと下の存在に見ている行為です。
飛びつくことによって、目線をできるだけ高くし、飼い主のあなたを見下そうと試みているのです。そこに「こら、やめなさい」と大きな声を出すと、犬は構われたと勘違いして飛びつきをエスカレートしてしまうことも。
一番いいのは、飛びついてきた瞬間に犬の後ろ足をあなた自身の足先で真横に足払いすることです。いっさい言葉を発しないで、無言でやるのがコツです。さらに大事なのはそのあとで犬の顔をみないこと。そのまま無視し、そしらぬ顔をして立ち去ろうとすると、犬はあなたをボスと認めるようになるはずです。
散歩に行こうとする時に飛びついてくるのは、嬉しさのあまりという場合もあります。しかし、小型犬ならともかく、大型犬が飛びつくと危険もあります。無視を通し、飛びついても無駄だと教えるようにしましょう。
マウンティングは支配心。飼い主の優位を示そう
飼い主などに前脚でからみつき、腰を大きく動かす。これはマウンティングといい、オスが交尾するときの姿勢ですが、じつはメスもマウンティングすることがあります。
交尾の姿勢ということから、ちょっとエッチなイメージを持つかもしれません。またメスがマウンティングをすると心配になってしまうかもしれません。しかし、それは違います。
犬は性的な衝動を感じているわけではありません。このマウンティングは、犬が相手より優位であることの表現であり、支配性の表れにすぎません。とはいっても、マウンティング行為が人の前で行われると、飼い主は恥ずかしい思いをします。やめさせるためには、上で紹介した足払い方式で、飼い主のほうが優位であることを示し、マウンティングしても相手にしてもらえないと教え込むといいでしょう。
マウンティングの場合にも「こら、やめなさい」と大きな声で叱っては逆効果です。叱ると犬はその行動を強化してしまいます。いっさい言葉を発しないで、無言で対処しましょう。
「人は人、犬は犬」が共存のための鉄則
犬と人間がうまく共存して暮らしていくには、犬は犬、人は人、そしてリーダーは人だ、と犬にしっかり教え込むことが大事です。しつけは犬を飼い始めたその日から始まるのです。
リビングルームの隅など、家族の気配が感じられるところにケージを置き、その中にクレート(寝る場所)とハウスを置いて、そこが犬の居場所であると教えます。
食事は人間のほうが先。家族の食事中はどんなにクンクン鳴いても振り向いたりしないこと。まして、人が食べているものを与えるなどもってのほかです。そして、家族の食事がすんでから犬にエサを与えます。こうして、人のほうが優位だと教えるのです。
子犬だからとベッドでいっしょに寝るのも絶対にNG。ソファのような高い位置に座らせるのもいけません。もしすでに悪いクセがついてしまったとしても、生活習慣を通して、人と犬との関係性を根気よく身につけさせましょう。そのほうが穏やかな関係を築くことができ、人も犬も幸せに暮らせるのです。
飼い主の前で仰向けになるのは?
犬が仰向けになり、お腹をベロンと丸出しにして見せる……。これは「あなたが大好き。全面的に信頼しています」という意思を伝える完全服従の「鼠径部提示」と呼ばれるポーズです。
ほとんどの動物にとって、腹部は最大の弱点。毛や皮膚が薄いうえ、大事な内臓が詰まっている部分なので、敵にガブリとやられると致命的なダメージを負ってしまうからです。その腹部をさらけだすのですから、どんなに信頼しているかわかるでしょう。
同じ鼠径部提示でも、しっぽを巻き込んで陰部を隠し、顔を横に向けているならば、絶対にかなわないと思うような相手に遭遇したときです。緊張のため、脚がぶるぶる震えることもあります。
鼠径部提示のとき、おしっこをもらしてしまうこともありますが、これは子犬時代、母犬に肛門を舐めてもらい排泄を促された記憶がよみがえっただけ。強く叱ってはかわいそうです。犬には悪気がないのでかえって混乱してしまいます。
このように「大好きポーズ」をしたときは、飼い主がやさしくお腹を撫でてやると、さらに喜びます。緊張感を示しているときは無視することが大切。こういうときは、どんな行動も犬にとっては恐怖なのです。無視されるとかえってほっとして、やがて緊張を解くことができます。
じゃれて手を噛むのは?
子犬は何にでもじゃれつきます。もし飼い主の手にじゃれながら歯を立ててかんだら、遊びの域を超えて自分が優位だということを飼い主にアピールする行為です。
飼い犬の立場としてはちょっと”身のほど知らず”な行為で笑ってしまいそうになりますが、犬は仲間同士でも、自分のほうが優位だと示すために、お互いに噛み合うことがよくあるのです。犬にとっては、一緒に遊んでくれる飼い主も仲間。遊んでいるうちに、自分のほうが優位だと誇示したくなる本能がついあらわになってしまうわけです。
子犬ならば、歯を立てられてもそれほど痛くないので、つい放っておきがちですが絶対にNGです。最初にやったときに、飼い主のほうが優位なのだということをしっかり示さないと、犬はその気になり、しまいには飼い主に抱っこされるたびに噛むようになってしまいます。
噛んだときは犬を腹ばいにさせて、アゴをしばらく抑え込み、飼い主のほうが優勢なのだと強く教え込むようにします。実は母犬も言うことを聞かない子犬にはこうやってしつけています。
噛むのではなく、犬が飼い主の鼻を自分の鼻でつっつくこともあります。これは感謝の気持ちを示しています。食事が終わったあとなどに、こうした行為を見せたら「いい子ね」とやさしく語りかけ、頭を撫でてほめてあげましょう。
不安を伝える前脚の動きとは?
前脚をあげて上下に動かしている――このしぐさは、不安やストレスを感じた犬が、なんとか自分を落ち着かせようとして行う「カーミングシグナル」と呼ばれるものです。
知らない犬とすれ違うときに、双方の犬がこうした行為をしたら、「お互いにケンカはよそうね」と話し合っているようなものと考えていいでしょう。犬も不要なトラブルは避けたいものです。
カーミングシグナルへの対処法は?
「カーミングシグナル」は、たとえば知らない人に散歩を依頼した場合などによく見られます。犬は知らない人にどこに連れていかれるのかと不安でいっぱいになります。そこでこうした行為をして、自分を落ち着かせると同時に、「僕は緊張しているけれど、攻撃する気持ちはないからよろしく」と、せいいっぱいのアピールをしているのです。
その気持を汲み取り、姿勢を犬と同じ高さぐらいまで低くして頭をそっとなで、敵意のないことを知らせるといいでしょう。
前脚をあげたままじっと動かないときは「獲物発見!」のとき。 攻撃に備え、緊張と集中をしている証拠です。襲いかかろうとしている対象が小さなペットだった場合は、犬に「ダメ!」と命令すると、しつけのできている犬ならばちゃんと理解し納得するはずです。
そうでない場合は、別の方向に小石などを投げて、一時的に犬の関心を他に向け、その間にペット動物を確保しましょう。
しつけ中のあくびを怒ってはいけない
人間の子どもだったら、話したり、叱っている最中にあくびをしたらとたんに大目玉を食らうところです。もし、相手が犬だったら? 叱っている最中の飼い主であれば、気を悪くするかもしれません。
しかし人と犬は違う動物だということを思い出しましょう。犬も眠いときにあくびをすることがありますが、犬のあくびにはもうひとつ目的があります。それはなんとかして緊張をほぐしたいとき。あくびをして緊張をほぐすわけです。
相手が緊張していると感じると、その緊張をほぐしてあげようとして、あくびをすることもあるそうですから、今のあくびもひょっとしたら、飼い主の気持ちをほぐそうとしたものなのかも知れません。犬は飼い主に気を使う生き物なのです。ほほえましくなりますね。
犬同士が威嚇しあったときなど、敵意のないほうが大あくびをすると、相手の敵意がみるみるしぼんでいくこともあります。あくびで和解というわけです。
このあくびのテクニックは人も使うことが可能です。犬がコチコチに緊張してしまったときには、犬の前で思い切り大きな口を開けてあくびをしてみましょう。かなりの確率で、犬はほっと緊張を解き、素直な行動に戻ります。
参考文献
『本当に知りたいイヌのココロ』(出版社:PLUS 監修者:藤井聡)
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